マムの絶望的なマネジメント

はじめに

この記事はシンフォギア Advent Calendar 2017の8日目です。
第2期「戦姫絶唱シンフォギアG」のマム(ナスターシャ)について書きたいと思います。 多分にネタバレを含みますのでご注意下さい。

マムのアンチ・ドラッカー・パターン

マネジメントといえば

マムことナスターシャ率いるフィーネ (または F.I.S.) は第2期の騒動の中心となる組織です。
世界を裏切って偽情報を流す米国に代わり、月の落下を防いで人類を救うことが目的です。
しかし、マムのマネジメントが酷過ぎて自体はどんどん深刻化してしまいます。
 
マネジメントといえばドラッカーですね。
経営学で有名な彼には「明日を支配するもの」という著作があります。
この本は世界の変化に対してどうすれば生き残っていけるかを説いた名著です。
本書とともにマムの行動を振り返り、どのような問題があったかを考えてみましょう。
 
*余談ですが本書でドラッカーはかの有名な「現代の経営」でとった立場は誤っていたと書いています。何が問題だったかというと、マネジメントに唯一正しい方法があるという考えに依拠したことです。労働形態の多様化によって、唯一正しい方法はなくなったとしています。

冒頭

とはいえ、資金は重要ではあっても、最も稀少な資源というわけではない。 あらゆる組織にとって、最も稀少な資源は有能な人材である。
 〜 P.F.ドラッカー 「明日を支配するもの」(1999, ダイヤモンド社) より

ドラッカーは人材の配置について、体系的に徹底して取り組まなければならないと説きます。
その上でその結果を記録、評価し次のアクションへとつなげるのです。

冒頭、2人の歌姫、マリアと翼が共演する大舞台です。
世界中が注目しています。
突如、そのうちの1人マリアがシンフォギアを纏いノイズを召喚。
世界へ宣戦布告するマリア。
 
どうやらマムと呼ばれる人が手を引いているようです。
このマム...

  • 全米チャートインした大物歌手という最高の隠れ蓑を持つマリアを一瞬で世界の敵に。
  • マリアの口ぶり、挙動への反応からするに完全な打ち合わせ不足。
  • 明らかに体調不良。

マリアという大きなカードを切った割に期待値の擦り合わせすらできていない。
さらにはそれでも足りず手持ちの全戦力を投入。
 
その上、目的を達したのは結局、急遽マムが遠隔召喚した増殖分裂タイプのノイズ。
最初からそのノイズだけでよかった。
しかも装者の反応から見るにそのバックアッププラン、説明してなかったの?
   
f:id:smile_0yen:20171206064719p:plain ノイズを見て "こんなの使うなんて聞いてないデスよ" と漏らす暁切歌
アニメ:戦姫絶唱シンフォギアG(第2期)/ ©Project シンフォギア
 
残念ながらこの後マリアが世界に宣戦布告したことのメリットは何もありませんでした。
人材の使い方が最悪です。
 
この組織にはもっと上の、大ボスがいるに違いない。
そう思いました。

中盤

組織には、価値観について多様な側面がある。それらのうち一つでも自分ものと違うと、 欲求不満に陥り、ろくな仕事ができなくなる。
 〜 P.F.ドラッカー「明日を支配するもの」(1999, ダイヤモンド社) より

ドラッカーは組織と自分が同じ価値観を持つ必要はないと断りつつも、共存し得なければ成果は上がらないと説きます。
成果を出すために優先すべきは価値観であると。
 
中盤になると、もはやどう見てもマムがボスであることが疑いなくなってきました。
 
そんな、ある日のこと。
突如、迫りくる米国からの追手が監視映像に映ります。
マム曰く「異端技術を手にしたとしても、私たちは素人の集団」(5話)
見つからないとでも思っていたのか、という口ぶり。
   
「どうするの?」と問いかけるマリア。可哀想にマムを信頼していたようです。
そこでなんと、シンフォギアの力で追手を手にかけろ、とマリアに謎の覚悟を強いるマム。
まさに外道

f:id:smile_0yen:20171206063657p:plain マリアに追手の排撃を命じるマム
アニメ:戦姫絶唱シンフォギアG(第2期)/ ©Project シンフォギア

そもそも襲撃が予想できていたなら要員に伝えて計画を練って置くべきでは?
マリアに覚悟を決めさせるためにわざとギリギリまで秘匿したのでしょうか?
それとも考える間もなくタイミング悪く見つかってしまったのでしょうか?
 
どちらにしても非道い。
 
マリアには全米チャートに入る歌声と強力なシンフォギア、そしてカリスマがあります。
その力を大きく削っているのが出たとこ勝負させる情報隠蔽と余計なプレッシャーです。
 
最終的にはマリアではなくウェル博士がノイズ召喚で追手に対応しました。
組織の目的を遂行するための方法が他にも残されていたのです。
 
小さな組織なのです。組織からも人に寄り添うことでより大きな成果が期待できる。
価値観を曲げる決断を迫り続ける必要はなかったのではないでしょうか。

終盤

チェンジ・リーダーとして成功しようとするのであれば、いついかなる場合においても、 決して不意打ちはしないことを原則としなければならない。 特に組織の基本にかかわること、すなわち、組織の使命、価値、成果と業績にかかわることについては、継続性が不可欠である。 チェンジ・リーダーにとっては、変化が常態であるだけに、とくに基本を確立しておかなければならない。
 〜 P.F.ドラッカー「明日を支配するもの」(1999, ダイヤモンド社) より

ドラッカーは、自らが変革の先鋒にある組織だけが生き残ると説きます。
そして変化の先頭に立ち、生き残る者をチェンジ・リーダーと呼びました。
 
マムは「やさしい子たち」のために突如方針を変更します。
しかし組織内に説明はしません。
マリアと2人で決めてしまいました。
 
今までマリアに散々嫌な役を強制しておきながら一転です。
しかも交渉相手は最大の敵であるはずの米国政府。
そして当然の如く交渉の場で殺されかける2人。

f:id:smile_0yen:20171206065226p:plain 秘密裏に自ら裏切った米国政府と接触するマム&マリア
アニメ:戦姫絶唱シンフォギアG(第2期)/ ©Project シンフォギア
 
このときばかりは最大の悪役であるウェル博士がいなかったらどうなっていたでしょうか。
しかしその後、今度は目的を達したウェル博士にお役御免と裏切られるのでした。
 
マムは決してしてはならない不意打ちをしてしまいました。
直後の内部分裂が示すように、組織としては終わったのです。

マムまとめ

マネジメント視点というか、もはや人として成功する要因が皆無ですね。

  • ノイズを操る悪役として部下を世間に売る (その後の物語から見ても無意味だった)。
  • 部下が価値観上どうしてもやりたくないことを覚悟と呼んで度々強制
  • やっぱり間違っていた、と部下に命を懸けさせた計画を独断でひっくり返す
  • 志を異にする輩(ウェル博士)を利用した結果、逆に利用されて計画を台無しにされる
  • そもそもまともに指揮をとれないほどの体調不良

マムの指揮下に入ってしまった3名の装者は不運だったとしかいいようがありません。

2期の感想

1期よりも見た目は派手になり、絵としてはより楽しめるようになりました。
そして過去の偉大なアニメ作品へのオマージュ連発。
盛り込み過ぎとしか思えませんでした。
 
心理描写は削られ、華麗なアニメーションで魅せることに終始していたように思います。
その結果、展開があまりにも急過ぎると感じました。
前回書いたような心の動きに関する記事など書けるべくもありません。
 
*1期からつながるクリスちゃんの第4話を除く。1日目のふそやん氏の記事も御覧ください。
 
しかし、その中でもマムのやり方は際立っています。ひどい。
おかげでマネジメントについて考える機会が得られました。

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