シンフォギア・セラピー

はじめに

この記事はシンフォギア Advent Calendar 2017の17日目です。
第3期「戦姫絶唱シンフォギアGX」について書こうと思います。
多分にネタバレを含みますのでご注意下さい。

心の闇とシンフォギア

呪われた魔剣ダインスレイフの力をギアに組み込んだイグナイト・モジュール
心の闇を増幅し、人為的に暴走状態を作り出すことでギアに隠された力を解放する。
その衝動を押さえ込み制御するのは装者。
 
そう、必要なのはカウンセリングです!
 
今回は1970年代半ばのアメリカで生まれた(*)NLPから読み解いて見ましょう。
NLP神経言語プログラミングと訳される心理療法の技法です。
*1973年まで続いたベトナム戦争の帰還兵対応が背景にあるようです。
 
対象とするのはマリア、翼、クリスの3人です。
(響は未来の存在が全て解決してしまいますし、切歌と調は純粋で闇が浅過ぎます)
 
なおNLPはその後、第2世代、第3世代と現代に至るまで発展を続けています。
現在はカウンセリングのみならずコーチングやスピーチなどに応用されています。
クリントン元大統領やオバマ元大統領など歴代の大統領も演説に取り入れています。

マリア・カデンツァヴナ・イヴ:一般化(必要性の叙法助動詞(must))

「弱い自分を、殺すんだっ!」
 
マリアは表面的に見ると自信に満ちた人物です。
しかし、運命に翻弄されてきた過去の悔しさを消化できずに抱えています。
もっと自分が強ければ...そう思っているのです。
 
自分に制約を課し、その他の選択肢が見えない状態。
このようなケースは一般化に分類されます。
 
本当にそうあらねばならないのか、というシンプルな問が有効です。
束縛から解き放ち、選択の幅を広げることで新たな可能性に目を開くのです。
彼女はエルフナインとの会話の中で制約の外を見ることができました。
 
「弱さかもしれない。でもそれは、私らしくあるための力だ。 教えてくれてありがとう。」
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アニメ:戦姫絶唱シンフォギアGX(第3期)/ ©Project シンフォギア

風鳴 翼:制約のビリーフ

「そうだ、この身は剣。夢をみることなど許されない道具。剣だっ!」
「お父様に少しでも受け入れてもらいたくて、この身を人ではなく道具として...剣として研鑽してきたのだ。」
 
翼は父との間に確執を抱えていました。
風鳴という防人の家に生まれたがため、その役割に翻弄されてきたのです。
父に、お前は風鳴の道具、と冷たく扱われる日々。
 
環境によって形成された思い込みをビリーフと呼びます。
周囲の出来事はビリーフによって意味付けされます。
翼は「父は私を疎んでいる」というビリーフを持っています。
 
このような制約になるビリーフを変える手法は複数あります。
しかし、今回は戦いの中で父自らが教えてくれたのでした。
「(道具にも、剣にも)ならなくていい!夢を見続けることを恐れるな!」
 
父が翼に冷たく当たってきたのは、翼のためでした。
家から遠ざけ、翼が夢を追えるようにしたかったのです。
 
「貴様はこれを剣と呼ぶのか。否。これは夢に向かって羽ばたく翼!」
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アニメ:戦姫絶唱シンフォギアGX(第3期)/ ©Project シンフォギア

雪音 クリス:ビリーフ、因果の歪曲

「残酷な世界がみんなを殺しちまって、本当に一人ぼっちとなってしまう。」
 
クリスは戦地で両親を失いました。
そのため、大切なものを失うことへの恐怖に苛まれ続けています。
その恐怖から因果の歪曲が見られます。
 
自分に大切なものができると、世界がそれを奪っていく。
これも翼のケースと同じ誤ったビリーフですね。
また、このクリスのケースは因果の歪曲とも言えそうです。
 
例外の存在など、因果関係を具体的に捉え直すことによって解消が見込まれます。
実際にクリスがはっとしたのは戦いの中で切歌、調に助けられたときでした。
 
「世界は大切なものを奪うけれど、大切なものをくれたりもする。」
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アニメ:戦姫絶唱シンフォギアGX(第3期)/ ©Project シンフォギア

第3期の感想

第2期でやりすぎたと反省してくれたのでしょうか。
イグナイト・モジュールのお陰で心理描写が非常に多くなりました。
各人が心の闇を払って新たな力を得、敵に立ち向かう姿は素直によかったです。
 
あのマムを持ち上げるのはどうかと思いましたが。
 
今回の記事でNLPについてあらためて考える機会が得られました。
シンフォギアには、

  • お約束通りのヒーローズ・ジャーニー
  • 派手なアクション
  • かわいいキャラクター

などなどスッキリさせる要素が詰まっています。
シンフォギアを視る行為には一定の心理的効能が期待されると言って良いでしょう。
これからはこのアニメを勧める行為をシンフォギア・セラピーと呼びましょう。